福岡 Rubyist会議 04 を開催した
9/7 に福岡で地域 Ruby会議を開催しました。
はじまり
RubyKaigi 2019 で id:nagachika が「parse.y is 魔境」と言っていたのが印象的だった。
RubyKaigi Takeout 2021 の Ruby Committers vs the World で parse.y がマジでやばい状況なんだと認識した。なのでこんなブログをまとめさらに英訳した。
この頃から俺は Ruby パーサーに興味を持ったのだった。
もうすでに終わっている
RubyKaigi Takeout 2021 で Ruby パーサーの歴史について語っているトークがあった。そのトークをした人物こそが Kevin Newton である。
先ほどの英訳ブログを全く面識のない Kevin にいきなり Twitter*1 でリプライを飛ばした*2。
「Kevin に何か反応してもらえると嬉しいな」くらいに思っていたが、その時の Kevin の返答は「Syntax Tree ってやつを作ってみたYO!」だった。
「これから始めようと思ったのに、Kevin はもう終わっていたのか…」
めちゃめちゃモチベーションが下がったのをはっきりと覚えている。そして翌年の RubyKaigi 2022 では当然 Syntax Tree の話をしていた。
さらに翌年の RubyKaigi 2023 では Prism *3 について話していた。
「もう Ruby パーサーは Kevin が、というより Shopify が牽引してくんだろうな」
そう思うには十分すぎる実績だった。
突然現れたニューヒーロー
RubyKaigi 2023 で突如として現れた*4 ニューヒーロー、Bison Slayer こと id:yui-knk である。
残念ながら俺は松本に行っていないのでリアルタイムで見ることができず、Bison Slayer であることを少し時間が経ってから知った*5。
俺が 2 年前に挑戦しようと思って一歩も歩を進めていなかったのに、たった一人で立ち向かい*6そして既に解決させていた。
俺の目には Kevin 率いる Shopify 勢にたった一人で真っ向から立ち向かっている*7ように見えたのである。
これをカッコいいと言わずして何をカッコいいというのか?
仲間が集まってくる
業務で困ったことがあったので相談しに行ったのが初めてのコミュニティ。その日初めてうづらさんとしおいさんに出会った。しおいさんがまだよちよちしてた。圧倒的成長を感じる。 #fukuokark04 https://t.co/LFe8m5FlBW
— 齋藤甚六 (@jimlock) 2024年9月7日
Fukuoka.rb の初参加は業務都合きっかけである。なので最初の一回だけで十分だったのだが、その年たまたま RubyKaigi 2018 に参加することが決まっていたので「顔見知りを増やしておこうかな」くらいの気持ちで参加し続けていた。
初めて参加した RubyKaigi は衝撃だった。Ruby コミュニティは楽しいところだと教えてもらった。
だから自分のできることをやろうと思った。それが Fukuoka.rb のホストだったり RubyKaigi 2019 のローカルオーガナイザーだったりする。
ひとまず Fukuoka.rb は「場の提供のみ。やりたい事は自分で持ってきて勝手にやってくれ」というスタンスで続けている。このスタンスでも参加し続けてくれる人たちがいるのでありがたい事である。
時は経ち RubyKaigi 2023 Day 2 に ruby-jp Slack に lr-parser チャンネルが爆誕した。するとパーサーに興味を持っている人たちはそこそこいる事が分かった。
そこで有志を募ってドラゴンブックの読書会をする事にした。そこそこ人が集まってくれて月イチペースでやっている。
生活発表をしたい
あかせさんから「生活発表って何ですか?」と聞かれるまで、生活発表という言葉は Ruby コミュニティでしか通じない言葉と認識していなかった。
要は「普段書いてるコードとか勉強会でやってる事の成果発表をしましょう」である。
大江戸 Ruby会議がうらやましくて「いつか Fukuoka.rb でもやってみたい!」とずっと思っていた。
俺が Fukuoka.rb のホストをやり出してから 6 年くらいだが、その間で参加面子も様変わりした。
特にコロナ禍前後で大きく変わった。一時期は参加人数が 15 名前後だったが、最近では 6, 7 名である。そこから地域 Ruby会議で話してくれる人はさらに絞られ、結局あと一名が足りなかった。
本日の Rails Girls Fukuoka 3rd の LT で福岡 Rubyist会議 04 のスピーカーを公開しました。近日公式サイトにも載せます。#fukuokark04 pic.twitter.com/6P2Mus0FC8
— 齋藤甚六 (@jimlock) 2024年6月8日
なので禁じ手の Matz 召喚をやった。RubyKaigi 2024 の沖縄でスピーカーをお願いして快諾していただいた。
ツナギメFM 第105回を聞いたら「福岡Rubyist会議04は生活発表会です」とのことだったので、急遽テーマを変えて生活発表します。タイトルは「SWAR」。聞いてください
— Yukihiro Matz (@yukihiro_matz) 2024年9月5日
どうやらコミュニティの話をしようとしていたらしいが、ツナギメエフエムを聞いて急遽生活発表に切り替えてくれたようだ。
こちらとしては正に望んでいたトークだったので嬉しい誤算だったし、RubyKaigi でも当日まで決まっていないタイトルが発表前から決まっているという偉業まで達成した。ツナギメエフエムは偉大。あかせさんはすごい人。
また、月イチペースで開催しているドラゴンブック読書会だが、雑談でちらほら面白そうなものを作っている人たちを観測できたので htkymtks, S.H., katsyoshi にスピーカーをお願いした*8。
かねこさんと Kevin については言わずもがな。
福岡 Rubyist会議 03 とは異なることをしたい
実はドラゴンブック勉強会の面子には Fukuoka.rb #333 Ninja Talk 大会 で LT をやってもらった事がある。
この Ninja Talk 会のクロージングでかねこさんに福岡 Rubyist会議 04 のキーノートスピーカーを依頼して快諾していただいた*9。
福岡の地域 Ruby会議は伝統的にキーノートスピーカーを 2 人お呼びしているので、もう一人探す必要があった。
Ruby 3.3.0 のリリースノートを見たら分かるように Ruby パーサーは今もっともホットな話題である。
だから Kevin に依頼した、と思われるかもしれない。実は違うのである。
実は前回の福岡 Rubyist会議のキーノートスピーカー候補に Kevin は入っていたのである。福岡 Rubyist会議 03 のキーノートスピーカーは RubyKaigi 2022 の三重で「直接対面でお願いする」と決めていた。
残念ながら Kevin は来日していなかったので対面で依頼できなかったという経緯がある。
なので今回かねこさんがキーノートスピーカーを快諾してくれたその瞬間から「何がなんでも Kevin をキーノートスピーカーにする」と決めていた。
だから来日できずリアルタイムリモート登壇ができなくとも最悪録画で話してもらうつもりでいた。RubyKaigi 2024 Day 2 に Kevin から「来日できる」と連絡がきた時には飛んで喜んだものである。
ただ Matz が福岡に来れないうえ当日登壇がダブルヘッダー*10だったので、Matz 用に部分的にオンライン/オフラインのハイブリッドにする必要が出てきた。
会場のネット回線の太さが分からなかったので私物ホームルーターを持ち込んだ。Matz が午前中のみ参加可能とのことで、Kevin と htkymtks を Zoom でつないで何とか乗り切った。ぶっつけ本番でちょこちょこと問題が発生したので、ぶっちゃけ午前中で多少燃え尽きていた。
またパネルディスカッションをやるという事にも挑戦した。
.@udzura の代理。 pic.twitter.com/bLH19Bd4nK
— 齋藤甚六 (@jimlock) 2024年1月13日
この時思い出の British Pub Maurice Hippo でまつださんときしださんが話していた内容が俺的にめっちゃ面白かったので「この時の話を素面で再現してください」とお願いした。
結果、開始 5 分で IPA がオートデプロイされたわけだが、これはもうこういうコンテンツという事にした。なお、モデレーターも俺がやったのでパネルディスカッションが終わった時にはカンファレンス中なのにほぼ燃え尽きていた。
開催してみて
今回も最高の地域 Ruby会議ができたと自負してます。
- CfP をオープンしない
- スポンサーを募集しない
という結構なことをやったにも関わらず多くの方に参加していただいた事に大変感謝しています。ありがとうございます。
結果的に 2 年連続の開催となりましたが、このクオリティを毎年続けるのはめちゃめちゃしんどいです。なので毎年あの最高なクオリティを維持して開催し続けている RubyKaigi の化け物具合を思い知らされました。
実行委員長である俺がほぼ一人で進めているのがしんどい要因だと思うけど、こだわってやるには人任せにせず自分できっちりやりたい派なんで。
なのでしばらく福岡 Rubyist会議 05 はやりません。もしくは他の方が実行委員長をしてください。
まあ、キーノートスピーカーを引き受けてくれる方がいれば話は別ですが |ω• `)チラッ
*1:現 X
*2:ちなみにこれが Kevin とのファーストコンタクト
*3:当時は YARP(Yet Another Ruby Parser)という名称だった
*4:あくまで個人の感想である。知っている人は知っていたと思う。
*5:多分 Day 3 の and the World くらい
*6:フィクサーに nurse がいたかもしれないが、それが分かるのはもう少し後のお話
*7:議論はあって然るべきだと思うが、不毛な争いを助長したいわけではない
*8:もっと言うと S.H. と katsyoshi は RubyKaigi 2024 のプロポーザルが不採択だったので「そのネタを福岡でしゃべってくれ!」とお願いした
*9:Ninja Talk 参加者にはこの事はオフレコにしてもらったので、公式発表はもっと後のことである
*10:噂によるとトリプルヘッダー